粛清者の噂話(内部資料)
元老院内部の参考資料の1ページ。本文は伝言の石板に書かれた噂話のようだ。審査の依頼者と査読者は不明。
粛清者の噂話(内部資料)
この原稿には、誰かが書き込んだコメントがあった——
カレケッティスへ。最近、伝言の石板でこの陰謀論が広まり、ある程度ネガティブな影響が出ている。対策を講じる必要があるが…度が過ぎないように注意しなくてはならない。このようなデタラメ話に対して、私たちが過敏に反応しているという印象を与えるとまずい。あまり真面目に扱ってしまうと、かえって人々にそれが事実だと信じさせてしまう。
※※※
読者の皆さん、最近伝言の石板でこんな噂を聞いたことはありませんか?
「粛清者組織のメンバーは全員、優れた技術を持つ暗殺者である。彼らが技術を継承する方法、それは自分の先輩を殺し、謎の金属で作られた脊椎を奪って、錬金術で自分の体に取り込むというものだ。そのため、彼らは先輩の技術と記憶を持ち、時には人格までもが先輩の人格に置き換えられてしまう。」
この件について、オクヘイマ現地の錬金術師にインタビューしたところ、思いがけない回答が返ってきました。その錬金術師(彼女の希望により匿名とする)の同意は得られているので、本編では前後の挨拶は省略し、皆さんが最も気になる部分をそのままご紹介します!
筆者「錬金術で人間の記憶を置き換えることはできるのでしょうか?」
専門家「錬金術だけでは到底不可能だ。しかし、オロニクスの神跡を考えると…確かに、あなたの言う噂は一考の価値がある。」
筆者「『粛清者』の噂が本当かどうかは置いておいて、この方法自体は可能だと言うことですね。」
専門家「人間のスキル、知識…これらは記憶と見なせる。オロニクスの神跡の力を借りれば、記憶をある種の実体に変えることができる…『謎の金属で作られた脊椎』は信憑性に欠けるが、骨格や義肢が神跡の媒体になることは否定できない。」
筆者「つまり、神跡と錬金術を使えば、記憶を永遠のものにできるということですか?」
専門家「ああ、理論上は可能だ。ただし、それは記憶だけの話だ。この方法で死者を生き返らせることは不可能。せいぜい、『すり替える』程度に過ぎない。」
筆者「すみません、それってどういう意味ですか?」
専門家「例を挙げよう。仮に私が母親の記憶を持っていて、両親のハネムーンのことすら思い出せたとしても…私が母親であるということにはならない。」
筆者「ああ、なるほど。」
筆者「でも、仮にある組織のメンバーが自分の命より、技術、秘密、さらには愛や憎しみなどの感情をより大切にしていたとしたら…この方法でソレを受け継ぐのは、理論上から言えば可能ということですね?」
専門家「その通りだ。」
筆者「なるほど、素晴らしい解説をどうもありがとうございました!」