薬王妖寇罪証記録
十王司に提出された報告書。丹鼎司文書館を整理した時の発見を記している。

薬王妖寇罪証記録

拝啓

神策府および十王司の依頼により、私は丹鼎司の資料庫を再整理し、丹枢の乱の後に残された薬王秘伝の記録を調べました。

邪党の首領丹枢が就任していた時期、丹鼎司はすでに秘密の生物実験を多数行っており、薬王秘伝は当時の仙人たちが創り出した様々な珍しい動物を復元しようとしていました。これらの実験の成果物は、名前も外見も、かつての軍用戦獣や古代の記録に対応しているものが多いです。

しかし、整理している中で、丹枢の就任前の実験が1つ見つかりました。記録が保管された時期は先任丹士長の任期中であり、先任丹士長が行方不明となっているため、関係者の名前はすべて塗りつぶされています。当事者に実験の目的について質問することはできませんが、その概要を以下に簡単に述べます。

実験の具体的内容は、いくつかの被験生物に持明族の血液と髄液を注射するものでした。被験生物には鱗類、羽類、毛類、魔陰の身の兆候が現れている長命種の志願者、さらには一部の短命種、および殊俗の民の志願者が含まれています。この実験は、上記の生物の通常の状態と、魔陰の身の状態での反応を観察するためのものです。

引用データは以下の通りです(報告書の添付資料をご参照ください)

「実験番号: 丁 鱗類 魚属。注射当日、鱗を持つ被験体が脱鱗し始める。頭部から角状のものが生え、頭部に骨格の二次発育が現れる。口器が明らかに外向きに広がった。背ビレとエラの近くに毛が生え始める…」

「実験番号: 辛 毛類 犬属亜種。 …翌日、被験体は凶暴化し、爪と歯が徐々に脱落する。しかしその後、より鋭利な器官が対応部位に生えてきた。被験体の首と尾に角質が生えてくる。この被験体は暴走し、丹士2名を襲って負傷させた後、殺処分された。現在、被験体はすでに処分された…」

「実験番号:甲戊 羽類、玉実鳥。髄液を█滴注射し、半日後に羽毛と寄生物が脱落し始める。被験体の体全体が長く伸び、頭部も他の生物の特徴を見せ始める。また、胸部には前足に似た器官が生えた。現在、被験体はすでに処分された…」

「実験番号:甲己 毛類 黄石。…2日後、被験体の皮膚が鱗のように変化し、関節が逆方向に曲がり、額には肉腫が現れ、角と蹄の成長が加速するなどの現象が見られ現在、被験体はすでに処分された…」

「実験番号:乙丙 仙舟人 長命種。本被験体は魔陰の身の前兆を見せており、家族や志願者本人の同意のもと、本実験に参加している。被験体に髄液を注射した後、魔陰の身が顕著に緩和されることはなかった。しかし、注目すべき点として、被験体が完全に魔陰の身に堕ちた後、本人の意識は他の魔陰の身に堕ちた者よりもはるかに鮮明であり、常人とほぼ変わらない理性を保っていた。後に、被験体は自分が治癒したと一方的に判断し、████を拒絶、当司はやむを得ず強制的な手段にて被験体を█████」

「実験番号:丁乙 殊俗の民 短命種 本被験体の身体的状況は短命種の中年から老年の段階にある。実験目的を承知の上で自ら実験に参加した。髄液を注射された被験体は、体内の細胞が活性化し、身体機能が大幅に向上した。元々衰えていた肉体が活性化し、視力、肝臓、腎臓の機能が回復し、関節の疾患による痛みの症状も一部消えた。本被験体は、皮膚の一部に鱗片が生えてくる以外、他の副作用はなかった…
……しかし、実験に予期せぬ事態が発生した。本被験体は実験後█週間で体に逆成長が現れ、中年の姿から次第に子どもの姿に変化し、精神的にも大幅に退化した。██の後、肉体は██液状化し、██████原因不明で消失したとする結論が報告書に記録されている…」

「実験番号:██ 短命種 ██族。本被験体はすでに死亡しており、生前の献体によって実験に参加した者である。████の協力の下、髄液を被験体の死体に注入した。持明髄液は、すでに死亡している肉体に対して活性化させる効果も有していた。体の毛髪が大量に生え、皮膚がはがれ始め、頭部には角のようなものが生えるという変異が起こり、██化の現象が見られた。
しかし被験体に起きた現象は我々が思い描いていた『死からの復活』ではなく、肉体が脳の死亡を認識していないかのように無秩序に成長し続けていただけ。持明族の血液と髄液は死体に対してもこれほど強力に作用するとは…実験は██が期待した結果には至らなかったが、安全を期して被験体が██する前に速やかに処分した」

上記文書と同様の記録については、欠けている箇所や紙幅の都合により、詳細は省略いたします。残りの部分のほとんどは、薬の投与量、注射時間、周期、実験の個体差など、さまざまな情報が記載されています。上記報告書の原本を同封してお送りいたします。

また、この一連の実験の当初の目的を調べ、リスク評価を行うべきかどうかについてご指示ください。

丹鼎司  ██