「民会」に関する談話記録
深く考えさせる記録——オクヘイマで最も尊敬される黄金裔でも、制度に対し疑問を抱いたことがあった。
「民会」に関する談話記録
「2人の黄金裔の談話記録。内容の大半がぼやけており、読み取れるのは数行分の会話しかない……」
ファイノン:
アグライア、もし僕たちが掲げる理想が民会で大多数の反対に遭ったらどうするつもりだ?
アグライア:
あなたの考えていることは大体わかっています。これからいくつか質問をしますが、正解も不正解も存在しないので、ゆっくり考えてくれて構いません。
アグライア:
1つ目。オクヘイマの人々は個人の決定より集団の決定のほうが正しいと信じていますが、あなたもそう思いますか?
ファイノン:
一個人が考えられる要素には限りがあると思う。
ファイノン:
ある学者はこう言っていた。「1つの会場に集まる群衆は、多くの手足と耳目を持ち、多くの個性と知恵を備えた異人である」と。
ファイノン:
…だけど一部の学者は反論して、そういった集会は派閥争いの心理に支配されていると主張した。1000人が1つの集団に集まっていれば、1つの提案に激しく賛同するかもしれない。でもそれを複数の小さな集団に分けたらどうだろう、同じ提案でもそれに反対する可能性がある。
アグライア:
2つ目。異なる決議がどのような影響をもたらすかを、市民たちは十分に理解していると思いますか?
ファイノン:
…それはしていないと思う。ほとんどの都市国家では、演説家による政策説明が必要とされているくらいだから。
アグライア:
それはつまり、民衆は演説家に煽動されやすいことを意味しているのではないでしょうか?
アグライア:
3つ目。民衆は自らが出した答えに責任を持ってくれると思いますか?
ファイノン:
僕の知る限りだと、オクヘイマの歴史には大きな軍事的敗北があったはずだ——
ファイノン:
敗戦の報がオクヘイマに伝わると、民衆は「遠征」を煽動した演説家を強く非難した。
ファイノン:
「遠征」は、ほかでもない市民たちが、自ら望んで民会で票決したことだったのに……
アグライア:
民会は1つの議題に対して、絶対的な正解を出さず、深入りもせず、責任も取りません。
アグライア:
最後の結果に思い悩むより、勝利を得ることに専念すべきだと思いますね。
アグライア:
4つ目。たとえ人々から支持されなくなったとしても、私は火を追う旅を続けると思いますか?
ファイノン:
…言いたいことはもうわかったよ。ありがとう、アグライア。
「…読み取れる内容は以上だ」