手書きの栽培マニュアル
手書きの栽培マニュアル。司祭による特別な祝福を受けており、防水・耐火の性質を備えている。

手書きの栽培マニュアル

「はじめに」
このマニュアルは、エリュシオン村委員会の認証を得て、歴代の村民の知恵をまとめ、オロニクスの祭壇での祝福を経て公開しています。読んだ方が自然への敬意を抱き、書かれている知識を活かし、大地と共生してくださることを願っています。

「麦畑の場所選び」
麦畑は風下で、陽のあたる場所が良く、土壌は指先で軽くつまんでもバラバラにならないくらいのものが良い。土をすくって嗅いでみて泥臭い匂いがしたら、豊作になる証拠。ザグレウスに惑わされる恐れがあるため、夜霧が発生しやすい場所は避ける。
ジョーリアの恩恵によって、わが村で最も良質の土地は、祭壇の南西から外側に向かって白い花の咲き乱れる林の縁までに広がっている。この一帯は年に2回収穫が可能で、ぎっしりとした麦穂が実る。

「引水システムの構築」
わが村の用水路はジョーリアの脈にならって設計されている。大地の水脈を模倣し、主水路は高所に沿って水を引き、支水路はそこから枝分かれした形状になっている。水路の幅は2尺、深さは1尺半が良い。水路の底には玉砂利を敷き、両側は石積みにして、水を確保しつつも、周辺の畑に浸水しないようにする。
主水路は年一度、機縁の月に清掃し、詰まりを防ぐ。さらい上げた汚泥は、よく乾かした後、花に適した上質の肥料になる。

「水車と分流テクニック」
水車はわが村の引水システムの要であるため、十分に硬度のある木で製作する必要がある。羽根板は、12柱のタイタンを象徴する12枚とする。木軸は半月に一度油脂を塗り、スムーズな回転を維持できるようにする。水車のある石の水槽は、隙間や亀裂が入っていないか定期検査をする。
水の分配量は村委員会の見解に従う:栽培の月は麦畑に優先的に分配し、歓喜の月は花畑に優先的に分配し、その他の月は均等に分配する。干ばつ時の分配量は、別途会議を開いて決定する。

「灌漑のタイミングと頻度」
麦作の灌漑タイミング:
種まきの後:土の表面が、指1本の深さ分湿る程度
穂が出る前:土の表面が、指3本の深さ分湿る程度
実入り期:作物が倒れない程度に適量灌漑する

花畑の灌漑タイミング:
昼長の月:朝夕各1回、水量は適量
自由の月から収穫の月にかけて:1日1回
慰霊の月から機縁の月にかけて:凍結防止のため5日に1回灌漑する
注意事項:灌漑のタイミングはエーグルの目の色(雲の状況)を参照する。山脈のような厚い雲が見えたら、暴雨になる可能性があるため、灌漑を延期する。

「9年輪作法」
わが村が発明した9年輪作法は、タイタンの数理にも合致し、地力を永続的に保つことができる。輪作の順序は次のようにする:
1、麦作(地力を消耗する)
2、豆類(地力を増す)
3、根菜類(中性)
4、麦作(地力を消耗する)
5、野菜・果物類(中度の消耗)
6、豆類(地力を増す)
7、麦作(地力を消耗する)
8、薬草と香辛料(軽度の消耗)
9、休耕(地力を回復させる)
畑地ごとに輪作の順番を記しておくこと。あぜの脇に石柱を立て、記号を刻んでおくのもよい。ミスが出ないよう、耕作管理責任者が統括する。

「あぜと境界石」
あぜの幅は1尺、高さは半尺とし、土を打ち固め、ハーブを植えておく。こうすることで、水や土壌の流失を防ぐと同時に、益虫を招き寄せ、害虫を駆除することもできる。
境界石は、水や土壌の流失により土地の境界が曖昧になるのを防ぐため、3年ごとに測定し直す。境界石の下には、タレンタムの公正な裁決の象徴として、銅貨を1枚埋めておく。

「休耕畑の管理」
休耕畑は荒廃させないよう、小豆やレンゲソウなどの緑肥作物を植える。緑肥作物がひざの高さくらいまで成長したら、土の中に埋め、腐熟させる。
虫害を減らすため、休耕畑のへりにはハッカやヨモギなどの芳香植物を植えておく。土壌構造を破壊してしまう可能性があるため、休耕畑で放牧してはならない。

「堆肥のテクニック」
堆肥坑は風下で陽当りが良く、水源から遠いところに作らなければならない。次の3層に分けて堆積させる。
最下層:太めの枝、干し草
中間層:厩肥、かまどの灰、残飯
上層:細かい土で覆う
7日に1回掘り返し、腐熟を促す。腐熟の目安:色がこげ茶色になり、触るとやや温かく、土臭いが悪臭はしない状態。

「特殊な肥料の配合」
1、麦畑専用の肥料:
腐熟した厩肥7割
草木灰2割
粉にした魚の骨1割
オロニクスの祭壇の前で集めた露少量

2、花畑専用の肥料:
腐熟させた木の枝5割
鳥の糞3割
細かい砂2割
砕いて粉にした貝殻少量
使用するときは、袋を開けて二刻以内に施肥すること。肥料の効果が失われてしまうため、エーグルの烈日を避けること。

「液体肥料の調製」
液体肥料は苗や花に適している。大き目の木の桶を用意し、
新鮮な草木灰1かご分
動物の尿ひしゃく3杯分
浄水ひしゃく10杯分
これらを7日間漬けおき、10倍に薄めて撒く。この液体肥料は強力なため、植物を火傷させないよう、直接かけるのを避けること。

【播種祭】
種まきの前日、村人全員でオロニクスの祭壇に集まり、司祭が祝福の儀式を執り行う。
各種の種少々
澄んだ泉の水1碗
新たに醸造したビール1樽
麦帆で編んだ冠を用意する。
司祭が種を泉の水の中に置き、全員で司祭の後に続いて祈祷文を念じる。

「麦畑でのピクニック」
昼長の月の3日、村人全員で手をつなぎ、麦畑の周りを歩きながら、古くから伝わる「麦波の歌」を歌う。こうすることで、畑の瘴気を払いつつ、麦の苗の力強い成長を守ることができる。
行進するときは、エーグルの軌跡に合わせ、時計回りに進む。司祭は長い柳の枝を持ち、麦畑を間引くように、軽く撫でながら進む。

「収穫感謝祭」
収穫の最後に、大地の恵みへの感謝として、小さい麦畑を1つだけ残す。
麦を運ぶ最後の荷車が村に到着するとき、村人は2列に並び、歌い踊りながら出迎える。各家庭が少量ずつ新麦をもらってパンケーキを作り、オロニクスの祭壇の前に並べ、司祭の祝福を受けた後、全員で分け合って食べる。この行事は、豊作の喜びと分け合いの精神を象徴している。

「あとがき」
このマニュアルに記された農耕テクニックには、代々の知恵が凝縮されています。ここに記しておくことで、後世に伝えたいと思います。エリュシオンの麦の波が永遠に揺らめき、花の香りが絶えず、村人が穏やかに楽しく暮らせるよう、タイタンのご加護がありますように。