なのの開拓手帳
三月なのかがベロブルグで手に入れた手帳。彼女はこの手帳で、ベロブルグに至る前の旅路を振り返っているようだ。

なのの開拓手帳

ブローニャにこのノートをもらってからもうしばらく経ったけど……
実はずっと前から、今までしてきた「開拓」の旅をちゃんと記録に残しとこうって思ってたんだ!
だって、あの子にちゃんとお話してあげるって約束したからね。
でも…でも!毎回毎回、今日こそちゃんと書こうって思うたびに、きまっていつももっと「面白い」ことが起きちゃうの!
いつもいつも!
ほんとにいっつもそう!
もしかしてあの子、本当にお笑いの天才だったりする?
今日はあの子/あの子も列車の大掃除に引っ張ってかれてるし、やっとチャンス到来!
…あれ、なんかウチがコソコソ悪いことをしてるみたいになってない?
それから、結構時間たっちゃってるから、細かいことは忘れちゃってると思うんだ。その辺は許しほしいなー、なんて。
…うーん、ウチってば、誰に謝ってんだろう?

熱帯夜の都
熱帯夜の都はね、規模は小さいけど、銀河貿易が盛んな商業惑星だよ。
丹恒から聞いたんだけど、熱帯夜の都は全部カンパニーに買収されちゃったんだって…なんでカンパニーって、なんでも買収しちゃうのかな?

うちとヨウおじちゃんは、「熱帯夜の都」に着いた日に「地域都市国家私警隊」に拘束されちゃったんだよね。
向こうは、列車が「メッセンジャー」と協力して、「神経言語ウイルス」っていうのを密輸してるって疑ってたの。
まあ…当たってはないけど、遠くもないって感じだったんだけど。
正確に言うと、ウチらは天才たちから、そのウイルスを回収する依頼を受けてたんだよね。
でも、「密輸」なんて言い方、ちょっとひどすぎじゃない?ウイルスを欲しがってたのは、向こうのお金持ちだったくせにさ。

ちなみに、「メッセンジャー」も熱帯夜の都では有名な組織の1つだよ。
「熱帯夜の都」ってネットワークも公共交通も、みんな財閥が支配してるの。
その中で「メッセンジャー」たちは、物理的な方法を使って「秘密情報」を連絡してるんだって。
うーん、なんていうか…「ネットワーク社会」で「伝書鳩」を使ってるみたいな?
でも、「通信許可証のない伝書鳩」は「私警隊」の自動機銃に撃ち落とされちゃうって感じだったよ。

その前のことは、ていうかその後のこともあまり覚えてないんだよね…とにかく、ウチらはその後、全宇宙向けのライブに参加したんだ。
「神経言語ウイルス」は言葉を通じて広がるものだから、「ライブ」を聴いた人はみーんな「感染」しちゃうの。
ウチらは現地のヒロちゃんっていう「メッセンジャー」の助けを借りて、ようやくその「ウイルス」を無効化したんだ。ちゃんと拡散も防げたよ。
…ちょっと簡単そうに聞こえるかもしれないけど、すっごくスリリングな冒険だったんだから!
まあ、最終的には災害も防げたし、ライブも無事に終ったし、めでたしめでたしってわけ!

へへ、ウチら「ナナシビト」はまた全宇宙を救っちゃったってこと。

ケルサス星
この星は粘土でできた惑星なんだ。
そう、住んでる生き物もみんな粘土でできてるの。
最初はベタベタした世界なんじゃないかって思ってたけど…
着いてみたら、あちこちがカラカラで、水資源がかなり足りないみたいだった。
雨季はあそこにとっては災害みたいなもので、平和を愛するケルサス人はみんな乾季のほうが好きなんだって。

カンパニーはケルサス星を銀河市場に参入させて、観光業を大々的に発展させるって派手に宣言してたけど……
でもカンパニーの本当の目的は、クレイ人にレアアースを吐き出せせることだって、銀河中が知ってる。
はあ、カンパニー…
これだから資本主義は。
ああ、今のはね、ウチが最近覚えたネットでよく見る言い回しなの。つい使っちゃった。

ここまでの話を聞いてると、クレイ人の星って、科学技術のレベルが低そうなんて気がしない?
でも実際は違ってたの、カンパニーが現地で無料の「サイバー化改造」を推進してたからね。
粘土の体にシリコン基板を埋め込んで、思考回路を何倍も向上させて……
でもその代わりに、クレイ人たちは自由に形を変えられなくなって、衝撃に対しても弱くなったんだって。
…なんだか、クレイ人って、もう粘土って感じじゃなかったな。

観光業なんて、あの星にとってただのキャッチコピーだけど、ウチにとって本当に楽しい体験だったよ。
機会があったら、ウチがバンジージャンプした場所にあの子を連れてってあげたいかも!

タイキヤン
タイキヤンって言ったら、今の列車組のみんなはきっと…
「ああ、三月がスタジアムを壊したところでしょ」って言うよね…
お願いだから、もうそのことは忘れてよ!
そんなことをいちいち覚えてても、なんにもならないんだからね!

確かに着陸する時に方向を制御してたのはウチだけど…
でも、丹恒みたいに落ち着いた人でもウチを止められなかったんだよ——
つまり、いろいろ大変で、複雑なトラブルだったってこと!
少なくとも、あの時のことをちゃーんと思い出したら、みんなこう言い直すべきだよ。
「ああ、三月と丹恒がスタジアムを壊したところでしょ」って!

それで、まあ…丹恒と一緒に牢屋に入ることになっちゃった。何日かしたらようやくヨウおじちゃんが助けに来てくれて…
「三つの世界を渡るたびに、囚人になってしまう」
…もしかしてこれって、ジンクスじゃなくて本当に何かの法則なのかな?
今回のベロブルグでは…どうだろ?確かに指名手配はされたけど、牢屋には入ってないよね!
つまり、これで謎のジンクス、ストップ!

モーターボールの試合はよく分からないけど、チケットがあれば見に行くよ!
リードしてるときは、みんなと一緒に大声で応援して、
負けそうなときは、みんなと一緒に落ち込んで…
なんか、自分が試合に出てるみたいにワクワクするし、疲れちゃうんだよね!

うーん…あの時応援してたチームの名前、なんだっけ?
いつかあの子とタイキヤンに行く前に、ちゃんと古参ファンになっておかなきゃね!

…今はここまでしか書かれていない。おそらく「大掃除」が終わったか、あるいはもっと面白いことが起こったのだろう。