羅浮若木災異の始末に関する考察・摘要
十王司判官が建木の危機に対して調査を行った、これはその記録の抜書き。

羅浮若木災異の始末に関する考察・摘要

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周知の通り、建木は帝弓の神矢によって滅ぼされ、丹鼎司、および丹鼎司に関連するものはどれも以前の姿を取り戻していない。しかし、長い時間が経過した今、過去の出来事を忘れない長命種である我々でさえ、過去の危機に対する警戒心が消えてしまっている。羅浮丹鼎司の権力分割は完全には実施されておらず、司の構成員の行動に対しても監視や教育が長くおろそかになっていた。こうした不注意が、今回の建木復活の原因となったのだ。

今回の作戦で捕らえた薬王秘伝の信徒は約半分が丹鼎司出身であった。嫌疑なしとされている丹鼎司構成員に対する取り調べ記録によれば、丹鼎司には長い間、旧時代の権力と地位に対する渇望、現状への不満、薬王秘伝や元凶である丹枢への同情の雰囲気が漂っていたそうだ。薬王秘伝は丹鼎司で深く根を張っていたことが明らかであろう。

経歴を見ると、丹枢は異常なほど清廉だ。それどころか、彼女は仙舟の医士の手本とも言えるだろう。医学書を編纂し、薬の調合法を研究し、何度も表彰されている。前任の司鼎雲華が持明族との争いに関わって追放された後、丹枢は羅浮丹鼎司の実質的な指導者となった。この件がなければ、彼女はいずれ司鼎の地位に登りつめるだろう。

他の六御が司鼎のいない羅浮丹鼎司を望んでいることは知っている。彼らは、そのような丹鼎司の方が安全だと考えているかもしれない。しかし、正にこのような指導者不在の状況が、丹鼎司から丹枢のような危険な存在を生み出したのだ。

私と部下は、丹鼎司の過去70年以上の管理文書、丹枢の非人道的な実験記録、彼女と持明族の龍師とおぼしき者がやり取りした手紙を詳しく調べた。これらから、彼女たちが一時的な興味により、古代の邪教を名乗って行動する犯罪集団ではなく、綿密に陰謀を練っていた妖人であることが判明した。

この災いの根がさらに深くならないよう、丹鼎司に対するさらなる分割と監督を行い、本件に関与していると疑われる持明族の龍師を拘留ならびに取り調べ、前任司鼎である雲華に対して再度調査することをここで十王に奏請する。

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「十王司は人事に関与する権利はない。雲華の件は、六御に任せよう。持明族については…私たちにできることは限られている。災いがここまで大きくなった以上、さらに対立を激化させるべきではない。ましてや、彼らはすでに表に出てきているから」――問字部判官 寒鴉