工正流衍刻石
遺憾が溢れ出しそうな刻石、とある匠の言葉が残されている。

工正流衍刻石

工正流衍、龍師に迫られ、龍尊像を造る。心に諸多の不忿が有りて、之を記すために石に刻む。

龍尊雨別、綏靖んじて全を求め、持明の聖地を窃み異族を陥れる、寧んぞ龍祖に容されんや?

吾工造司にて身を大工正に居く、曾て其の非を直に諫めたが、竟に龍師に貶斥され、続けて左遷となりて、像を造くるよう迫られる。吾四百年も虚しく活きて、竟に邪を黜き正を崇ぶ力無く、嗚呼悲しきや。

詩を以って懐を抒べる:
七歳に天命を知り、今や八十八となる。
往年朝霜の如し、凄冷たりや鏡中の花。