キャラLv.20で解放
「拾綫の月の末、神殿よりパン数個、ドライフルーツ1袋、ロウソク数本が盗まれる事件が発生。
些細な被害ではあるが、これは神の冒涜と秩序の乱れに繋がる重罪である。
調査の結果、容疑者は灰色の髪に猫耳を持つ、痩せ型の小柄な人物と判明。身のこなしが素早く、狡猾な手口を用いるため、発見した際は十分に注意すること。
情報提供者には賞金5千、身柄を拘束した者には賞金1万を与えるものとする」
――ドロスの街中に貼り出された指名手配書「逃がすな!捕まえろ!」
監獄に囲まれた汚水まみれの広場に響く、鞭打ちの音と悲鳴。
ボロボロの服を身にまとった少女は、黄金の血を滴らせながら、人混みの中を必死に駆け抜けていく。
彼女が演壇の上を走り抜けようとすると、そこではちょうど、肥え太った司祭が街中の信者たちに演説をしているところだった。
「おおケファレ、この美しい世界に感謝と賛美を……」
「正直、誠実、寛容……」
「——我らは美徳で魂を磨き、愛で災いを鎮める……」
はっと少女が振り返った瞬間、執拗に追いかけてきていた猟犬が彼女に跳びかかり、その顔に新たな3本の傷が刻まれた。
「金銀財宝はタイタンにとって無価値なれど、汝らの敬虔なる信仰心の証にはなる……」
歓声が湧き上がる中、演壇には高価な織物、食材、宝飾品などが次々と投げ込まれ、山のように高く積み上がっていった。
「黄金裔たちの戯言に耳を貸してはなりませんぞ。ケファレを信じて心から祈りを捧げれば、かの神は必ずや救いの手を差し伸べてくださるのだから……」
人混みを掻き分けながら進む間に、手にしていたパンは落としてしまったようだ。
少女は人混みの中、どうにか周りを見渡そうとしたが、その目に映ったのは、大波のように押し寄せてくる冷たい表情の人々だけだった。
次第に両足の力が抜けていき、嘲笑う人々の顔が、視界の中で少しずつぼやけていく。
しかし、遠くから聞こえる声が彼女の耳に鋭く突き刺さる。ここで止まるわけにはいかない。
「泥棒!」
「犯罪者め!」
「クズが!」
少女は目を閉じて、とても高い城壁の上から身を投げた。
「おなか…すいた……」
冷たい川の水が彼女の意識を飲み込んでいく。
こうして彼女は、命懸けの逃走の果てに初めての勝利を収めたのである。