キャラLv.40で解放
「▇▇▇月▇▇日
『聖女よ、あなたの声に喜んで耳を傾けましょう、エスカトンが迫るこの時、どうか私たちをお導きください。私たちが戦争で勝利できるようお祈りください』と、王たちが言いました。
王たちは『あたしたち』のためにヤーヌスの聖女という身分を復活させました。そして絹の衣を纏わせ祭壇に上げると、『あたしたち』の素顔を隠す儀式を行ったのです。
ですが、『あたしたち』は街へ戻ることはできず、王城に住むことになってしまいました。本当は、病める農民や流浪の戦士のために祈りを捧げ、悲しむ人々や迷える人々の心を癒やし、新郎新婦に祝福を送り、彼らが焚火を囲んで歌う姿を見守りたかったのに……
でも、王は『あたしたち』が民衆の中へ入ることを快く思っていなかったのです。そう、ヤヌサポリスにいた頃と同じように……
ママ、『あたしたち』はあの時あなたが経験した苦悩と無力感を、今になってやっと理解できたようです。神託によって、あの王たちが過去のしがらみを捨てて黄金裔を探すために手を携えると、そうすれば世界を救える一筋の希望が生まれると…『あたしたち』は信じていたのです。ところが彼らは、黄金の血を持つ者に権力を奪われることを恐れている…彼らが望んでいるのは、神託の名を借りた戦争だけ…せっかく得られた民衆からの信頼や期待の眼差しは、徐々に失われつつあります。
ヤーヌスの火種はますます熱く燃え上がり、黄金の神託はなおも『あたしたち』を見定め、促している……
――だから『あたしたち』は逃げることにしました。
トリ▇▇とトリアンは百界門を開いて密林の中で合流する手はずだったのですが、毒矢の雨に襲われてしまいました。トリアンは難を逃れたものの、兵士に捕らえられ、『あたしたち』からどんどん離れていってしまって…
トリ▇▇は自分から敵の槍に飛び込んで、武器を引き抜かせまいと必死で敵兵を押さえつけていました。でも、『あたしたち』は王の残酷さを見誤っていたようです。『あたしたち』は死してなお、他の都市国家へ渡ることを許されなかったのだから。
……
いつもの数十倍もの苦痛が、身に降りかかってきて…この春、『私たち』のほとんどは、まだ花が咲いていない荒野に永遠に残されることになったのです。
さようなら、トリ▇▇。
さようなら、トリ▇▇。
さようなら、トリ▇▇。
……
トリアン、『あたしたち』はまだ君に『さようなら』を言いたくないのです。どうか『あたしたち』を見つけて……
今夜こそ、『あたしたち』はこの荒野を抜けられるはずですから」
——トリノンが保管している日記表紙には空を駆ける流星が描かれている