「博識学会からのメッセージ、処理完了」
「模擬宇宙は正常に作動中……」
「著作全集の再版完了」
「しーっ、声が大きい。マダム・ヘルタを邪魔しちゃ駄目……」
……銀河の辺境にある塔の中、人形たちは整然と雑務をこなしながら彼女を待っていた。
時間はあっという間に過ぎ、数多の人々が歴史が刻まれた夜空を流星のように横切り、瞬いたと思えばすぐに軌跡を残して消えていく。
「マダム・ヘルタ、引きこもってからどれくらい経ったのかな……」
「今もまだ思索を続けてたりして……」
「ふうん、あなたたちはいくつか公理を発見しただけで終わりだと思ってたの?」
彼女はゆっくりと背伸びした。演算過程を書き記したノートから目を逸らした瞬間、新しい考えが再び芽生えてくる——
「解明できないものなんてない…徹底的に追及してみせるから」